地球環境問題の解決へ向け、いまあらゆる分野で電動化の動きが進んでいます。その中で技術革新が望まれているのが私の専門分野であるモータです。以前のモータは、高い性能と効率をいかに小型化して実現できるかが開発の基準でした。ですが、自動車や航空機などすべてを電動化するには、更なる小型・軽量化とハイパワー化に加え、超高出力モータを大量生産するための省資源化が重要です。 ここで問題になるのがモータを回転させるための“永久磁石”です。材料にはネオジムという希少な金属が使われており、産出できる国もごくわずか。今後の資源不足が懸念されているうえ、高温になると性能が落ちるという弱点もあります。そこで本研究室がめざすのは、永久磁石を使用しないスイッチリラクタンスモータの開発。安価な鉄と銅のみを原材料とするシンプルな構造で、実現すれば幅広い分野への応用や普及が期待できます。

そもそもモータの開発には莫大な時間とお金が必要です。材料面だけで考えると魅力的な磁石レスモータも、制御が難しく騒音が大きいという弱点を持っており、実用化が遠いため企業での研究も進んでいません。言うなれば大学だからこそ没頭できる研究であり、大きな使命感を持って挑めるのです。そうした困難な開発の基本となるのは、私が得意とする制御を考慮したシミュレーション。コンピュータ上で検証を繰り返し、効率的なモータの形状と最適な電流波形を模索しています。その過程で計算や設計の考え方、実験装置を制作する手法など、ものづくりのベースが身につくのも醍醐味です。あらゆる産業で縁の下の力持ちを担うモータは、まだまだ可能性を秘めた分野。脱炭素社会などより良い未来を築きたいというあなたにオススメの研究室です。

もはや身近な暮らしに不可欠となったスマートフォンやノートパソコン。充電を繰り返して使うこれらの電気機器には、主に「リチウムイオン二次電池」が組み込まれています。しかし、材料となるリチウムやコバルトはレアメタルと呼ばれる希少な天然資源であり、脱炭素社会の実現や次世代の宇宙開発に向けて、高性能な次世代電池の開発は世界の課題なのです。その解決をめざし本研究室で取り組むのが、次世代電池のエース候補でもある「全固体フッ化物イオン電池」の開発です。一電子の反応を伴うリチウムイオン電池と比べ、フッ化物イオン電池は一度に複数の電子が反応するため、数倍の容量や安定性を叶えることが可能。高スペックな性能を長時間維持できるため、“空飛ぶクルマ”などのモビリティ革命も叶えられるのです。

とは言え、フッ化物イオン電池にも大きな弱点があります。それは140℃以上でなければ動作しないということです。つまり室温レベルでも電池を使うには、イオン伝導率を上げる必要があるのです。本研究室では“超イオン伝導”の実現に向けて、さまざまな物質の組合せを追究。他の研究機関と共同で実験・検証を進める中で、バリウム・カリウム・窒素・フッ素の化合物によって、高い伝導率を得られるという結果を導き出しました。こうした材料開発が発展を遂げ、フッ化物イオン電池が広く普及すれば、社会を大きく変えることができます。例えば、災害時でも安定して電力を供給できるような、理想の未来が叶えられるかもしれません。自分の選んだ道を信じて、全力を注げるような人たちとともに、この研究を発展させていけたらと思います。