本研究室では航空自衛隊や船の機関士として働いてきた私の経験を生かし、陸海空すべての乗り物を研究テーマにしています。現在、取り組んでいるのがスマホに搭載された「ジャイロセンサ」を使って、目的地への移動を誘導するアプリの開発です。カメラの手振れ補正にも使われるジャイロセンサは、加速度の測定から瞬時に“ズレ”を感知することができます。これまでの地図アプリは衛星からの電波で位置を受信するGPSが使われていて、山や森の中など電波状況が悪い場所では使えないという弱点がありました。しかしジャイロセンサなら、目的地へ向かう直線ルートの方向がずれた場合でも、戻る方向を正しく指示できるのです。機能性はシンプルですが、山中などの入り組んだ場所では活用性も十分。しかも故障やトラブルの心配が少なく、誰もが直感的に使えるため、社会への幅広い普及も期待できます。

乗り物に加えて、本研究室では産業用ロボットの研究にも力を入れています。その特色はプログラミングではなく、ロボットを直接手で動かして動作を記憶させる「ダイレクトティーチング方式」を取り入れていること。すべての人が扱えるよう、単純な技術をどこまで便利にできるか…という点にこだわっています。このように本研究室では、人や社会の悩み・問題に寄り添い、本当に役立つ技術の開発を大切にしているのです。乗り物やロボットを通じてより良い未来を描ける、クリエイティブで夢のある研究をともに進めていけたら嬉しいですね。また、私自身が国家公務員だった経験から、自著の参考書を使った公務員試験対策も実施。これまで本研究室から100人以上の公務員を輩出しており、昨年も11人のゼミ生全員が難関の技術職試験に合格しました。あらゆる方向からあなたの夢や目標を力強く支えます！

日常的に使っているスマホ。指先ひとつで直感的に画面を動かせる秘密は、画面との摩擦にあります。こうした摩擦・摩耗・潤滑に関する研究を「トライボロジー」といい、私が専門とする分野です。本研究室で主に取り組んでいるのが、水滴と固体表面の間に生じる摩擦メカニズムの解明。濡れたプールサイドはツルツルと滑って危険なのに、ナイロン袋を開きたい時には指先を水で湿らせたりしますよね？これらにはすべてトライボロジーが関連していて、摩擦メカニズムの解明から目的に合わせたさまざまなものの設計が行いやすくなるのです。例えば、ホコリや水滴の付着がひとつも許されない半導体の製造工程にトライボロジーの研究成果を活用すれば、より高性能な電子機器だって生みだせるかもしれませんよ。

もうひとつ本研究室で取り組んでいる研究が“手触り”です。スマホケースのすべすべ感、ペットボトルのざらざら感のように、指先の触感を素材のやわらかさや摩擦の変化などから解明し、快適な手触りをつくるヒントを探しています。つまりトライボロジーは身近な毎日に密着した研究分野でもあるのです。広い分野にまたがっているため、あなたが持つ「不思議だな？どうしてこうなるのかな？」という好奇心が大いに発揮できるでしょう。本研究室に所属する学生は自ら実験装置をつくり、さまざまな対象の摩擦係数を測定します。幾度の実験を通して摩擦の原理や理論を理解し、最終的に“摩擦法則”を確立することをめざします。トライ＆エラーの中で「モノを設計する基本」を身につけ、人や社会を救う技術者に育ってほしいですね。