多くの制約や条件が絡み合う世の中の複雑な問題に対し、数学の助けを借りて、最適な答えを導き出すための学問。それが「オペレーションズ・リサーチ(OR)」です。例えば電車の運行システムなどを決めるのに、このORが活用されています。そんなORを専門とする⼩畑先生が、研究対象の柱としているのは、人間の「好み」や「直感」による主観的な判断。あいまいな気持ちや感性を数値化して、意思決定の根拠を客観的に示す研究を進めています。
人の主観的な意思決定を数値化できれば、自分の判断について他者にうまく説明できない時や、自己分析の際にも役立ちます。また、自治体が公共施設の建設場所を決める際など、個人の判断を統合して集団の意思決定に使うアプローチの事例も見られます。そうして数学の力で一人ひとりの「想い」を全体の意思決定に反映させることで、誰もが納得できる、公正な社会を築けるかもしれません。ただ人の心には矛盾や気まぐれも多く、きちんと整合のとれた数値化を実現する理論の確立には、まだまだ課題が。でもだからこそ面白く、やりがいある研究だと、小畑先生は考えています。
小畑先生の研究のもう一つの柱が、スポーツのパフォーマンス評価。例えば「サッカーチームのスタメンの組合せの良し悪しを、パス・シュート・ファウル数などでどう評価するか」についてORの手法を応用して分析をします。他にも、大相撲の力士の15日間の成績について、対戦相手の強さを加味して「本当の強さ」を測り直して数値化する、といった研究も。こうした研究に触れることで、スポーツだけでなく、社会の様々な事象や価値判断について、新しい視点で見直し、「本質」を見極める力が養えると思います。高校までの数学とはイメージが違うかもしれませんが、数学にはこんな一面もあるのです。

理工学部
数理・データサイエンス学科
小畑 経史 先生
博士(情報科学)。九州大学大学院 理学研究科修士課程 数学専攻修了。高校時代から数学の応用に興味があり、大学で所属した応用数学の研究室から「数学が社会の役に立つ」という実感を得たことが、ORによる意思決定の手法に関心を抱いたきっかけ。サッカーが大好きで、大分大学に勤務していた際にJリーグの大分トリニータのサポーターとなり、現在までの20年以上にわたって熱い声援を送り続けている。また学生時代はバイクに乗り、そこから自動車好きになり、今も休日によくドライブを楽しんでいるそう。