人間の身体と
サイバーワールドを融合させた
複合現実感技術などをテーマに、
より良い社会の実現を目指す
佐藤宏介先生。
研究テーマである三次元身体空間工学や
情報考古学についてうかがいます。
教授 佐藤 宏介先生
マジックハンドや
食べられるデータと、
新たなサイバー社会を提案
これまで開発した技術に、投影型マジックハンドがあります。手のCGモデルを床や壁にプロジェクションマッピングし、タブレット端末からの操作により、投影した手を広げたり伸ばすことができる身体拡張技術。まるで自分の身体のような感覚を感じながら、遠くにいる人と握手できたり、家電を制御できたりします。また、世界ではじめて、食べられるデータを食品の内部に埋め込む技術も開発しました。包装紙などに印字されていた賞味期限やアレルギーなどの情報を、人の目では見えないように2次元コードで埋め込み、特殊な光を照射してデータを読み取るもの。見た目も食感も変えず、情を読み出すことに成功しました。
日本はSociety 5.0を掲げ、デジタルな仮想空間と現実空間の融合による新たな未来社会の構築を目指しています。こうした時代に、「使う側」ではなく「創る側」として、あるべきサイバー社会を提案できるのが私の研究のおもしろさです。
文理を融合した情報考古学、
その研究経験を
新学部にも活かす。
研究のもうひとつの柱が、情報考古学です。これは、デジタル技術を活用し、これまでの考古学に深い分析や新たな知見を与えるもの。人類最古のピラミッドであるエジプト・サッカラ遺跡の調査隊長を務めるなど、国内外の考古遺跡・遺物の三次元計測を手がけ、貴重な歴史遺産のデジタル保存にも貢献してきました。文系と理系を融合したこれらの研究経験は様々な場面でも役立つと思っています。
多くの課題は技術の進化によりおおよそ解決されており、残されているのは、例えば環境問題のような多分野が複雑に絡み合う問題です。その解決には、理工学における専門知に加え、文理が交じりあう様々な知の活用や、仲間とのチームビルディングが欠かせません。だからこそ、自分の考えのみに縛られず、違う意見や分野の存在を、興味をもって知り、それを認める「オープンマインド」の姿勢も4年間で身に付けてほしいと思います。
大学院生のとき、南太平洋にあるイースター島の巨大なモアイ像を三次元計測するプロジェクトに参加し、南米など10か国以上を調査したのが文理融合研究活動の原点。だから、お金も時間もあれば、世界中の遺跡を訪れ、研究対象の生の迫力に触れたいです。それを精密に三次元計測して、失われつつある人類の遺産をデジタル博物館として後世に残したい。
『弱虫ペダル®』は、オタクで自転車競技に全く素養のなかった主人公が、良き仲間や先輩・後輩に支えられて全国優勝するストーリー。若い人が成長していく姿に感動します。映画ではインドの工学部学生の成長する姿を描いた『きっと、うまくいく』もぜひ見てほしいと思います。
インターネットの世界だけでは得られない知識や体験があります。キャンパスで教員や友人と語り合い、実際に現場に足を運ぶ経験もいっぱいして、大きく成長してほしいと思います。そして、人生100年時代に、令和の若者の人生は100歳まで続きます。自分の人生を豊かにするためにも、学び続ける「オープンマインド」の姿勢を大切に!