小畑経史先生の研究テーマは、
オペレーションズ・リサーチ(OR)
という応用数学の分野。
世の中の困っていることを
数学で解決し、
文理問わず
あらゆる分野に応用できるという
研究の魅力をうかがいます。
教授 小畑 経史先生
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世の中の複雑な問題や
客観的に測れない
人間の判断に数学を役立てる
私たちは日々さまざまな意思決定をしていて、できれば最適な選択をして、良い結果を出したいと思っています。そんなときに役立つのが、私の研究分野であるオペレーションズ・リサーチ(OR)です。ORは問題解決学ともいわれ、複雑な条件や制約が絡み合う問題の最適解を導くときに力を発揮します。例えば、看護師やサービス業の勤務シフトスケジュール、電車やバスなどの運行システム、企業の経営戦略など、分野を問わず「最適化」が必要とされる場面で広く活用でき、学んだ数学を世の中のために使えるのもORの魅力です。とりわけ、私が興味を持っているのが、例えば「好き・嫌い」「おいしい・まずい」といった個人の好みの奥にある数理メカニズム。このあいまいな人間の主観的判断を数値化し、客観的に測ることができるようになれば、効果的な意思決定に役立ちます。
数学で身につくのは、
世の中の本質を見抜く力
サッカー好きの私は、趣味と研究を兼ねて、ORを使ったスポーツデータの解析も行っています。今、取り組んでいるのが、大相撲力士のパフォーマンス評価。力士の強さを測る指標に番付がありますが、対戦しない相手もいれば、同じ1勝でも相手によってその価値は違ってきます。そこで、実際に対戦した1対1の取組結果をもとに、誰が本当に強いかを総合的に評価。従来の番付では見落とされていた新たな視点を得ることができます。
ORは、現実世界で起こる複雑な事象や問題の本質を抜き出し、抽象化して数式にしますが、単純すぎても、忠実すぎても、適切な分析ができなくなります。この数理モデルを導く作業が重要で、難しく、おもしろくもあるところ。AIが暗記や計算を代替する時代に、数学で身につくこの「世の中の本質を見る力」こそ、社会でますます重要になっていくように思います。
力士のパフォーマンス分析結果(※1)
- (※1)
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- ・2024年3月大阪場所分析結果の一部抜粋
- ・数値化して評価することで従来の番付では見えない実力を可視化できます。
例えば、1から100をひとつずつ足すのと、Σ(シグマ)を使うのとどちらが効率的かといえば、Σ(シグマ)です。数学は、手を抜くために努力する学問だと私は思っています。数学はめんどくさがりの味方ともいえます。公式を暗記するのが中心と思われている高校までの数学とは大きく異なるのが、大学の数学です。公式そのものよりも、その導き出し方を覚えておくほうがいろいろなケースに応用できます。
現在J2の大分トリニータのサポーターです。ファン歴はかれこれ20年以上にわたり、関西に来ても愛し続けていきます。大学時代からバイクが好きで、そこから車好きになり、おいしいものを探しがてらドライブするのが休日の楽しみです。
分からなかったことが分かるようになるのは、純粋にうれしく楽しいこと。それこそ、学問の根本です。だから、数学だけではなく、多くのことに興味や好奇心を持って大学生活を過ごしてほしいと思います。また、考えた道筋や理解した知識を自分自身の言葉で伝える習慣を心がけてください。それが、あなたの力になります。