秩序と規則性がもたらす複雑で予測困難な現象の中に確率論的法則を見い出す

Takehiko Morita

盛田 健彦教授、理学博士

関連リンク:研究者総覧(教員データベース)

エルゴード理論、確率論、力学系

※2025年4月開設

数理・データサイエンス学科

研究の概要

確率論といっても場合の数を基礎とする初等確率論ではなく、個数、長さ、面積、体積、容量といった量を統一的に扱うことを可能にした測度(そくど)に基礎をおく現代解析学に類する理論です。20世紀初頭に至るまでは学問的にも怪しげな分野だったようですが、今や確固たる数学理論として確立されています。とくに、不確実で不透明かつ曖昧で複雑なVUCA(ヴーカ)の時代といわれる現代においては、データサイエンスの技能に加えて、その理論的支柱としての重要度が増していると思います。例えば、右図下図のように壁で閉鎖された部屋の中を壁に反射しながら一定の速度で運動する質点の運動は、最初に動き出す方向が決まれば、何時間後どの方向に質点が動いているかが完全に予測できるはずですが、初期データがほんの僅かずれるだけで、アウトプットがとんでもなく異なり、複雑で制御や予測が難しい現象をもたらします。このような数理モデルに潜む確率論的法則を見つけ出そうというわけです。

研究成果の社会での実装、活用シーン

上の二つ目の図をある部屋を真上から見下ろしたものと思ってください。部屋の中には間仕切りやテーブルなどが置いてあります。部屋のどこかの点から光線をある方向に発射した場合、部屋の各場所はどの程度の明るさになるでしょう?(できるならば、効率よくどの場所にいても同じくらいの明るさになるような方向に光線を発射する向きを決めることができれば良いのですが)。このような問題への接近法と応用の基礎となる部分を担っています。

高校生へのメッセージ

数学に限らず、これまでうまくやれたこと、うまくできなかったことにとらわれず「ひょっとしたらやれるかも」「ちょっと興味が湧いてきた」という単純な動機で良いので、この機会に4年間は気合い入れて「この際一からやってみるか」という気持ちが生じたことを継続してみることを勧めます。向いているか、向いていないか考えているうちにも時は流れて行きます。「やってみるか」と思えたことを、「ある程度継続すること」ですね。それが数理・データサイエンスならば大歓迎です。